2010年5月9日日曜日

小林照幸著「野の鳥は野に 評伝・中西悟堂」

「日本野鳥の会」創始者であり、数々の自然環境保全活動に活発な行動、発言をした中西悟堂氏を知ると同時に「日本野鳥の会」の歴史を紐解く中で、新潟のトキのケージに野生動物が入り込みトキが被害を受けた先日の事例を思い起こし、時が人間の活動を緊張感のない無防備な行動に堕落させている気がした。
悟堂氏が放し飼いを実践した頃すでに野生生物の侵入を防ぐことを念頭に施設を作っていたことから考えても先日の事件は思慮の浅い設計から起きた悲劇だったのではなかろうか。


「日本野鳥の会」という団体も、紆余曲折があり触れたくない部分も赤裸々に語られている。
財団法人となり組織の維持、拡大のためには一人の人間の考えだけで動くことは危険を伴い、組織としての在り方を求められた頃には創始者であり、「日本野鳥の会」の思想そのものであった悟堂氏の在り方は独裁として、ワンマンとして感じられていく、過激な追い出しがあり、囲い込みがあり、鳥を愛でることが自然を知り、自然を守っていくという姿勢から会は微妙にブレ始めていく様子が見える。
現在の会の状況がどうなのかは詳しくは知らないながら、個人としての楽しみとして鳥と付き合っていきたいと実感させたのは事実である。

人を知る楽しさを久しぶりに感じさせた作品であったことが嬉しい一冊である。

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